1.将棋で病気に気づき,将棋に救われた父
OYさん(男性,父親〔55歳〕がパーキンソン病と診断される)
- 手がふるえているのに気づく
- 独立してから帰省するのは年に2〜3回程度でしたが,実家に帰ると将棋好きの父が待ち構えていて,一日中相手をさせられるのが常でした。
二年前の夏休み,家族を連れ帰省し,いつものように父と将棋盤をはさんで座ったのですが,次の手を考えている父の手が細かくふるえているのに気づきました。「手がふるえているね」と指摘すると,「え?」と言って手を見るのですが,意識して見ているときにはそれほどではなく,まぁ年のせいだから,と思うことにしました。
ところが,半年後のお正月には,父の手のふるえは明らかにひどくなっていました。再び「手がふるえているよ」と指摘すると,すでに父も自覚していたのでしょう。照れたように笑って「最近,足もふるえるんだよ,もう年かな」と言うのです。驚いて母に聞くと,毎日一緒にいるせいか,あまり気に留めていなかったようで「そう言えば,前より歩くのが遅くなったかしら」と言う程度でした。
- 妻の勧めで病院へ
- ところが,そのやりとりを見ていた私の妻が,ぜひ神経内科を受診するように強く勧めてきました。妻の職場にパーキンソン病を発症した方がいて,その方と症状が似ている,というのです。
「パーキンソン病」と聞いて,当初父は「親を病人にしたいのか」と烈火のごとく怒りました。しかしそれにもめげず,妻は「私が一緒に病院についていきますから」と説得し,私も「違っていたら安心できるじゃないか」と勧め,やっと受診してくれることになりました。
しぶしぶ病院に行った父でしたが,なんと妻が心配したとおり,「パーキンソン病」と診断されてしまいました。診断当初の父は,病気に関する本をかき集め,ひたすら読みふけっていました。寝たきりになることを恐れて,具合が悪いのに無理に外出し,かえってその後ふせってしまうようなこともあったようでした。
そして何より私がショックだったのは,手のふるえでうまく指せなくなり,あれほど好きだった将棋をあきらめてしまったことでした。半年前の段階でもっと強く受診を勧めていれば,とこれほど後悔したことはありません。
- 同じ病気の方たちと将棋を再開
- しかし,そんな父を救ってくださったのは,外来で知り合った同じ病気の方たちでした。同じく将棋を趣味とされていたお仲間たちで,週に1度集まるようになったのです。
メンバーには,患者さんもいらっしゃいますし,健康な方がいらっしゃることもあるようです。でも皆さん病気のことを理解して,駒を落とそうと時間がかかろうと気にしません。
父もだんだんとうちとけ,一時のようにすぐふさぎこんだり怒ったりすることもほとんどなくなりました。
- 周囲の人たちに支えられ
- 幸いにも薬が体にあったようで,病気の方も大きな進行はありません。とはいえ,歩くのはだいぶ遅くなりましたし,調子のよい時,悪い時の波もあるようです。
でも,今は母や同じ病気のお仲間たちに支えられ,一生この病気と付き合っていく気持ちになれたようです。